2017年3月12日日曜日

犬ジャージ先輩



タリスカーを買いにリカーショップへ行った 市街地のはずれにあるショッピングセンターまでドライブ 田舎町なので20分くらい車を走らせてリカーショップに到着 周りには山しかない田舎町はお酒一本買うのも一苦労
リカーショップの隣にはゲームセンターが有り ふらりと立ち寄ってみた
今じゃゲームセンターと言わずにアミューズメントパークと言うんですね 十数年ぶりに訪れたゲームセンターは凄く綺麗で驚いた メダルゲームに群がる老人に戸惑いながら店内をぶらりぶらり 良いですね 今のアミューズメントパークなる物は禁煙で綺麗だしヤンキーがいない 僕の若い頃のゲームセンターはヤンキーのたまり場でしたから
でも 昼間からベビーカーを横に置き メダルゲームに没頭する主婦の群れやカードゲームを子供に混じってプレイする中年男 一定数 変な人は居てますね

僕の若い頃のゲームセンターはヤンキー達のたまり場で学生服で喫煙する奴が居たり 店内は灰皿設置で煙が充満 体にも心にも良くない所だった
時代は格闘ゲーム全盛期で現実でも灰皿や空き缶が飛び道具として飛び交っていた ソニックブーム!
昔の田舎町のゲームセンターは危険 危険
音ゲーマーの僕がビートマニアの鍵盤をバチバチ叩きながら バチバチの喧嘩をよく目撃していた

若い頃 僕が入り浸って居たゲームセンターはかなり治安が良かった それは「よっしん」という ゲームセンターの主がいたからでヤンキーよっしんはオタクやヤンキーも分け隔てなく接し ゲーセンを統治していた 優しいヤンキーよっしん 田舎町のゲーセンキングは人望も厚かった

彼は格闘ゲーマーで店の隅にある通称よっしん席 バーチャファイターの筐体に百円玉を積み上げていつも鎮座してい
バーチャファイターで僕はよっしんと何度も対戦したが一度も勝てた事はなかった
そして流石はゲーセンキング ビートマニアでも僕のスコアを上回っていた あんなにも太い指で器用に鍵盤を叩きやがる
僕が下手なんじゃあないよ 格ゲーはそこそこの腕前だし 昔のビートマニアなら全曲クリア出来るレベルだよ よっしんが上手すぎるんだ

ゲーセンキングよっしんにはゲームの他にもう一つ特技があった
それは「利き酒」ならぬ「利きシンナー」
不良のシンナー遊び よっしんはヤンキーネットワークを駆使してシンナーをかき集めていた
工場作業員から良質のシンナーを車の板金屋や塗装屋から大量にシンナーをゲットしていた
トルエンに魅せられた男よっしんはビニール袋をシャカシャカ シンナー遊びを四六時中
シンナーを3吸いもすればトルエンの含有量がわかる という「利きシンナー」をあみ出した
これは「30%やな」「これはアカンわ10%やな」「これはスリーナイン!」20歳を越えてシンナー遊びを没頭する彼はかなり格好悪かった

しかし よっしんは不美人な彼女の「トルエン駄目!絶対!」要望によりシンナー遊びをやめた
「利きシンナー」そんな特技 失った方がいい 褒められたもんじゃない 皆から馬鹿にされるだけ


近くのコンビニエンスストア 数年振りによっしんに出会った
老いたよっしんは昔より少し痩せて髪の毛の色を変えヤンキーテイストを残していた

プレーステーション4で夜な夜なバトルフィールド1のコンクエストでドンパチしている僕は中年ゲーマーの仲間が欲しくて よっしんを誘ってみた
中年スクワッドによっしんは加わると思っていたが答えはノーだっ

「私だけを見て」と彼氏に無意味な束縛や時間の共有を求める 勘違いアモーレ系彼女から「ゲーム禁止令」を通告されており ゲームをする事を禁止されているそうだ
またもや彼女からの要望により よっしんは特技を失った

4月によっしんは結婚式を挙げる予定で「もう一生ゲーム出来やんかもな」と言ったよっしんは笑顔で去っていった その背中は幸せそうに見えた 

特技を失い 愛を選んだ男の背中
その背中を眺めながら僕は「田舎のヤンキーは何故アニマルプリントされたジャージを着るのだろう ダセェな」と呟いた