2019年7月11日木曜日

パネルマジック



先日 出勤すると朝一から厨房で怒号が響いていた 勤務先のカフェのマスターが荒ぶるっている
理不尽な怒りの矛先は何時も不美人な女子スタッフか厨房スタッフ「ケイジ」に向けられる
八つ当たりタイムは開店前からスタートだ
マスターの怒りの理由は昨夜に風俗店に行き お相手の女の娘がたいそう不美人だったからだ
マスターが苛立ちを従業員にぶつけるのはこのカフェの名物みたいなもんだ

ケイジの白いシャツに付いた小さなトマトソースのシミ
その小さなシミに難癖をつける
「清潔感がない」「身だしなみがなっていない」「毛深い」「顔が不潔」「髪質がヒジキ」
後半なんてただの悪口だ

寝起きでボサボサの髪の毛 二日酔いでさらに苛立ちながら歯槽膿漏と酒の臭いで極悪な口臭と罵声を吐いているマスターが従業員の整容について言う資格なんてないね

昨夜飲みに行った帰り道 風俗店のボーイの調子のいい口車に乗せられてノリノリで自分好みの女の娘を指名してマンションヘルスにI can fly!
薄暗いエントランスで風俗嬢との御対面 そこには写真とはまったく似ても似つかないダーティなホテヘルレディが立っていた
パネル写真の風俗嬢は可愛く笑顔で写っていたが 実物は肌荒れが酷く 笑顔ひとつ無く無愛想そしてなんだか汚い
マスターは幸が薄く 暗い空気をまとう風俗嬢を見て
「重い病気を抱えてる」のではないかと思ったそうだ

パネル指名料2000円でハズレをチョイスしたマスターは あまりに違いすぎる容姿を問いただす
「パネルの写真を加工したやろ 実物と違うと言われれへんか?」
手を繋ぎホテルへの1室に向かう廊下 歩きながら正面を向き目も合わさずに無表情でホテヘル嬢は言った
「鼻だけだよー」
マイケル・ジャクソンみたいな嘘をついた風俗嬢とマスターはしっぽりと1時間30分エロティックな時を過ごした

出会い系で幾多のクリーチャーと桃色の夜を越してきたマスターが怒るなんてよっぽどの不美人だったに違いない
パネルで夢を見て 不美人の春を買う 夢を見るのもお金がかかるし騙されもする まあ そういうものですね


そして今朝もマスターの怒号が響いてる
八つ当たりの厨房 本日は不美人な女子スタッフが出勤しておらず矛先はまたまたケイジに向けられ いつもの様に難癖をつける
「うなじが汚い」「青髭が青すぎる」「腕の毛が濃すぎる」「陰毛みたい」「俺より身長が高いのが腹が立つ」「眠たくてイライラする」「二日酔い」
確かにケイジの天然パーマでうなじが汚く 腕の毛がウルヴァリンで毛深いが生まれつきなので仕方がない 後半の発言なんて八つ当たりそのものだ

今回のマスターの怒りの理由は昨夜 一夜を共にした出会い系で知り合った女性が不美人すぎたからだ
「化け物やった 見た目が汚らしかったし流石の俺も厳しかった」
ブスハンターのマスターが冷蔵庫にもたれ掛かり苦しそうにつぶやく
出会い系の不美人達を昇天させるイングロリアス・バスターズをここまで疲弊させるとは ギネス級の不美人だったに違いない

マスターはまた騙された 出会い系の写メールに
「松嶋菜々子」によく似た写メールは偽りだった
田舎町から1時間もかかる駅で街合わせ ソワソワしているマスターの前に降り立ったのは「松嶋菜々子」に似ても似つかないクリーチャー

自称 松嶋菜々子に似ているお方は白髪混じりでボサボサの長髪
お年は還暦を少し過ぎたくらいの前歯が無い老婆だった

「前歯が無いのは反則やわ」
妖怪ハンターのマスターにも反則があるらしい

マスターは前歯が無い老婆を見て鉄板焼屋へデートの予定を変更し パチンコデートに切り替えた
しかし不運は続くもの スロットでボロ負け 立ち飲みで焼酎を浴びるように呑み お酒の力で小汚い老婆と2人で昭和テイストな古びれたラブホテルへGo to Hell!

流石はプロの妖怪ハンター マスターは前歯の無い老婆とエロスな一戦を交えた オエー!
60歳オーバー歯抜け妖怪との桃色のバトルはマスターの心に深い傷を負わせた
流石は大妖怪 心だけではなく身体にも傷を負わせていた マスターはフェラーリの時に股間に痛みを覚え 朝にペニスを確認したところ2本の擦り傷がついていたそうだ
前歯が無い老婆なのに何故に股間に傷が と僕は思ったが内容は聞きたくないし知りたくもない
妖怪を昇天させるのが妖怪ハンターの定めだとしても 言い換えると性欲の強い悪食なだけ 無理矢理にいきり立たせ交わる性交に
そこに快楽はあったの?

いつの時代も男と女の騙し合い 男は騙されるくらいが丁度いいと僕は思うけど還暦オーバーの女性と松嶋菜々子と勘違いするなんて騙されるではなくて脳みそがとろけてる
偽りの自分を作り上げ 阿呆が騙され
そのおかけで飛び火 この田舎町の厨房で悲しき被害者が居るという事を忘れないで欲しい
いつの時代も男と女の騙し合い なくなる事はない 人一倍強い性欲を持つマスターの色欲が無くならない限り 厨房の哀れな被害者は増えていくばかりだ

僕は厨房の片隅で祈ってる 悲しき被害者の為
「マスターの性欲よ無くなれー おしっこの出る装置に成り下がれー!」