2017年4月23日日曜日

地獄のタオル



地獄に落ちる夢をみた まさに阿鼻叫喚 背中から足の裏までに汗びっしょりで目覚めた昨日の朝
閻魔様に下を抜かれるくらい嘘はついてきたし悪業を重ねてきた僕は地獄行きだと自覚しておりますが 綱渡りライフの現世なんだ 夢くらいはエロティックな夢を見させてほしい

怖い夢を見て洗面所 寝汗でびっしょり青い顔 寝癖で歯磨き むくんだ腫れぼったい目で眺める鏡に移る中年ヴィアン これもまた地獄絵図


幼い頃に読んだ絵本や童話 「ねないこだれだ」「ぐりとぐら」「おしいれのぼうけん」
子供の頃によく見た前「日本昔ばなし」
読んだり観たりしたとは認識してるのだけれどユルユルな僕は物語の結末をすっかりと忘れてしまっている
お尻をだしたら一等賞にはならず でんでん でんぐり返って社会からバイバイ バイ お家には帰れない中年男性に成長した僕も結末を覚えている話があ
それは「蜘蛛の糸」と「地獄の人参」
共によく似た話で地獄をテーマにしている 幼い時の地獄に対する恐怖からか罪深き僕の終の場所への暗示なのか鮮明に覚えている

「蜘蛛の糸」は芥川龍之介の作品なのでご存知の方が多いと思いますが「地獄の人参」は日本昔ばなしの作品で昔にあくどいお婆さんが死に地獄に落ちた所から始まる 
お婆さんは極楽に行きたいと閻魔様に交渉する 生前おこなった善行それは托鉢僧に腐った人参をあげた事 地獄に出現した腐った人参にすがれと閻魔様は言う お婆さんが腐った人参を掴むと極楽へ浮かび上がる 極楽へ登っていると地獄の亡者達もお婆さんの足を掴み極楽へ行こうとする 沢山の亡者達の重みで腐った人参が崩れるとお婆さんは思い 亡者達を蹴り落とすとお婆さんの持っていた腐った人参も崩れ お婆さんは地獄に落ちていく 業突く張りな性格のお婆さんはやはり極楽へ行けずに地獄に逆戻りする

悪人は極楽には行けない 悪い心なかぎり極楽には行けない
死んだら地獄行き予定の私めは地獄に落ちてもすがりたいし足掻きたい 極楽から降りてくる蜘蛛の糸のようなワンチャンスをもらう為に人に施した善行をダーティな過去から探してみた

僕にはジュン君という知り合いがいる  
彼は焼き鳥屋チェーン店で20年間アルバイトのポジションで居座り 仕事への愚痴をぼやき続ける中年男性だ
ジュン君は蝶結びが今だに結べない頭脳の持ち主で人から驚かれるような肌の汚さをしている「茶色く汚れた軽石」や「青カビの餅」や「乾燥した雑巾」を想像して頂くと汚い肌をイメージしやすいと思います
おまけにチビでハゲで小太りなジュン君は悲しいスペックでこの世を生きている たぶん前世で相当な罰当たりな行為を働いてるね
しかしジュン君は明るく性格が良いので友人が多く人気者だった

「ヴィアン呑みに行こう!」ジュン君からお誘いがあり アルバイト先の焼き鳥屋に行く事になった
ジュン君は家まで迎えに来て開口一番 僕に言う
「昨日 風呂に入ってないんや ヴィアンお風呂貸してくれ シャワーで頭だけでも洗いたい」
汚い!訳がわからない そんなに急いでないのだからお風呂に入ってから迎えに来いよ 僕は渋々 小太りな汚物中年にお風呂を貸してあげた

「ヴィアーン!バスタオル貸して」数分後 お風呂場からジュン君のマヌケ声が聞こえてきた
そうだバスタオルは干してありまだ乾いていない 親友山ちゃんから貰ったイエモンのライブグッズ 大切にしている大好きなイエモンのタオルしかなかった
少しの仏心 仕方なくジュン君に貸してあげる事にした

脱衣所に裸のジュン君が立っていた 僕は驚き声が出た
「汚すぎるやろ!何よその尻は!」
ジュン君の尻は汚すぎる カビ生えてるんじゃない?汚れた茶色 薄紫の斑点や赤紫の吹き出物 不快な色のコントラストと無数の灰色クレーターでジュン君の尻は形成されている

嘔吐しそうになった 二日酔いの寝起きだったら吐いてるレベルだ
「オエッ!ちょっと待って その汚い尻をタオルで吹くつもり?ドライヤーで全身 乾かせばええんちゃうかなぁ」
僕はタオルを貸すのをためらった
「当たり前やろ なんの為のタオルや」
ジュン君は僕の手からタオルを奪い取り身体を拭き始めた

あぁ死んだ
吐き気をもよおす尻 小学生なら泣き叫ぶような汚い尻を拭かれて
タオルが死んでいく
火炎放射器でジュン君の身体を乾かしたい気分さ ファイヤー!

思い起こせば地獄に落ちた時の閻魔様との交渉材料が肌の汚い小デフ中年に貸してあげたイエモンのタオルくらいしかなかった もっと善行を積めば良かった 悲しい

汚れちまったタオル 大切にしていたイエモンのタオルにすがり極楽へ登っていく事が出来るのだろうか
極楽への途中 新型ウイルスに侵された様な汚い過ぎるジュン君の尻を思い出しながら登って行くとしたら なんかムカつく あんな尻を思いだすなんて苛々する

こんな悪心だから僕はやはり地獄行きだとブログを書きつつ再確認
ワンチャンス皆無

2017年4月9日日曜日

カミングアウト レイジビヨンド



僕は意外にも知り合いからカミングアウトされる事が多い
「真面目なサラリーマンの鬱病」「清楚な女性のリストカット事情」
「明るい女の娘の生まれの不幸」
「文学青年のバイセクシャル」など突発的に切り出される
突然の重い告白に僕の心のキャパシティは軽くオーバー 聞くだけでうまく励ます事も出来ないでいた
見かけによらずに僕のハートはおセンチですからね


僕にもまだピュアな心が残っていた高校一年生の時 放課後にコンビニでたまるカスの群れの中にいた
少し背伸びをして無糖の珈琲を飲んでいる友人のキョウスケは目の前に流れるドブ川を見つめながら僕に言った

「俺の親父はパイプカットしてあるんや」

激甘UCCの缶コーヒーを飲んでいたチェリーボーイの僕でもパイプカットの意味は知っでいる 幼い僕のパイプカットのイメージは悪徳政治家やドスケベな大地主だった
突然コイツは何故に親父のパイプカットを僕に言ったのだろうか 父親のパイプカット 精管結紮術
そのカミングアウトの疑問や衝撃 僕は今でも覚えている

「絶対に誰にも言うなよ」キョウスケは言った
絶対に言うなよは皆に知れ渡るフラグ 僕はわかったと頷き 高性能スピーカーの様に言いふらした

それから暫くキョウスケは挨拶の代わりにキットカット!のイントネーションでパイプカット!と言われていた

パイプカットお父さんは渋いダンディな顔立ちをしていた 色男ゆえに他で遺伝子を残さない様にパイプカットをしたのかは知らないが 子供達は男前な容姿とスケベ心を受け継いでいた
キョウスケは三人兄弟の次男で長男 三男とも男前で田舎町で少し有名だった
3兄弟はいい感じにグレて町工場に就職しヤンキーテイストを残しつつ田舎町に落ち着いた



先日 行きつけの和食屋の駐車場 ほろ酔い気分で代行タクシーを待っている時に街灯の下 スマートフォンを片手に大声でがなり煙草を投げ捨てる素行の悪い男がいた
パンチパーマでハンティングワールドのサイドバック 細い口髭で黒のスーツにノーネクタイ 昭和のチンピラのテンプレートな男

パンチパーマなんて10年ぶりくらいに見たなあ とジロジロ見ているとパンチのおっさんとガンのくれあい 飛ばしあいになりそうなので僕は目を落とした 面倒事はゴメンだと思っていると パンチのおっさんがギラギラの金ネックを光らせなが話しかけて来
「おう!ヴィアン!久しぶりやないか!」
パンチのおっさんをよく見ると友人キョウスケの兄 タイキ君だった 僕は驚いた
「うわぁタイキ君なにがあったんで?昭和のチンピラみたいな格好して」
パーラメントに火をつけてタイキ君は言う
「俺はなったんよ ヤクザにな」
コレはカミングアウトでもない 大体見たらわかった 30歳を越えてからの極道デビュー タイキ君はそこまでは不良じゃなかったのに知らぬ間に仁義なき道に進んで  
いた
「警察に逮捕とかされたら身内悲しむで」僕はもちろん心配するフリをして訊いた
「ヴィアン 俺はな考えてヤクザになったんや それくらいわかるよバカヤロー!」
北野映画に憧れた様な台詞をタイキ君は睨みをきかし言ったが後々聞くとタイキ君が長年努めた町工場を辞めて極道の世界に入った時 嫁は悲しみ子供を連れて家を出て一家離散したそうだ 
離婚したかったの?何をどう考えてアウトローデビューしたのかはわからねぇよ!バカヤロー!

「おっ!迎えが来たから行くわ!またなヴィアン!」
煙草を投げ捨てタイキ君は黒塗りのセンチュリーに乗り込んだ
型遅れした古びれた車 背伸びしてくたびれた高級車に乗らなくてもいいのにな と僕は悲しい気分になっていると運転手の男が僕に向かって会釈をした
運転手の男をよく見るとそれは友人キョウスケの弟 テツオだった
数年会わないうちに3兄弟の2人がヤクザになっていた
兄弟が暴力団員 厳しすぎる
身内が反社会的勢力は辛い いや一般市民の僕達にとっても怖いし辛い

あぁ 渋いダンディなお父さんがパイプカットをもっと早くに施術してくれていたならば 反社会的勢力が1人生まれることはなかったのに カットォ!カットォ!