2016年2月24日水曜日

ピンクの怒り


近所のガソリンスタンドが潰れた
たまにガソリン入れに行く程度だったので 別に困ることなんて何もなかった
そのガソリンスタンドに僕は一つ思い出があった
それは二十歳の頃の思い出 十四年たった今でも覚えている

僕が給油をする為にガソリンスタンドを訪れた時 茶髪でピアスをしたガソリンスタンドの店員に話しかけられた
「ヴィアンさん セックスの時にピンクローター使うんですか キヨミから聞いたっすよ」
いらっしゃいませ の代わりにそんな事を言われたら僕だって返す言葉に困った オーライ!オーライ!と言われても僕の心は大丈夫ではなかった

別にピンクローターくらい使っても構わないんだけれど 思春期にそんな噂を流される事が厳しい 知人に言われるならまだしもガソリンスタンドの店員に言われるなら何処まで広がっているかわからない

僕の心はブルブルとピンクの怒りで震えていた 残念かなピンクローターを使ったのは事実で女性サイドからのリークで噂が流れる 何なんだよ極太ディルドとか使用している変態野郎を噂にして皆で嘲笑ってくれないか ピンクローターなんて可愛いもんだ

僕はガソリンスタンドの店員を怒りたかったが怒れなかった
「ピンクローター使った事 お前に関係ないやろ!いらっしゃいませやろが余計な事言わんでええんや!」なんて言えやしない 男の子として格好悪すぎる
怒りたいけど怒れない 言いたいけれど言えない モヤモヤした気持ち 僕 凄く嫌いなんだよね

勤務先のカフェに知り合いの男の子が来た 数年ぶりに会う年下の知り合いは見ないうちにチャラチャラした男に変貌していた
カウンター席に座るやいなや
「ヴィアン君のおかげて楽しめました ありがとうございます」
僕に感謝の言葉をのべた 僕は何故お礼を言われるかわからなかった
「僕 ヤスイになんかしたっけ?お礼言われるような事」僕は思い当たる事がなかった
「いやぁ 先日 沖縄へ旅行行ったんですよ その時 風俗に行きまして風俗店の呼び込みの男がヴィアン君によく似てて 沢山呼び込みの男がいたんですけどヴィアン君を信じてヴィアン君に似ている男の店に決めたんですよ その店すごい当たりでめちゃめちゃ可愛くて良い娘やって 遅漏の俺もすぐにイケました ヴィアン君のおかげです ありがとうございました」ヤスイは笑顔で言って珈琲に口をつけた

えっ その話に僕は関係ないないんじゃないかな 濃い僕の顔が沖縄の人とシンクロしたのは別にいいとしても 風俗店で良い娘に当たったの僕が関係あるのかな そしてサラリと早漏の僕に対しての遅漏アピールいりますかね そんな事を言う為にこのカフェに来たのかい

なんだよヤスイ 僕はよくわからない そんなありがとう要らないよ
なんて言えばいいかわからない 馬鹿にしてるのかと怒れば良いのか なんて言えばいいかわからない モヤモヤした気持ち

ヤスイは店に来てまで謝辞を言いに来た
煽りともとれる感謝の言葉を言いに来た
「そうか 良かったな」
僕はそう答えた

僕も知らぬ所で役に立ったとちょっとブルブルと震えた

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