近所のガソリンスタンドが潰れた
たまにガソリン入れに行く程度だったので 別に困ることなんて何もなかった
そのガソリンスタンドに僕は一つ思い出があった
それは二十歳の頃の思い出 十四年たった今でも覚えている
「ヴィアンさん セックスの時にピンクローター使うんですか キヨミから聞いたっすよ」
いらっしゃいませ の代わりにそんな事を言われたら僕だって返す言葉に困った オーライ!オーライ!と言われても僕の心は大丈夫ではなかった
「ピンクローター使った事 お前に関係ないやろ!いらっしゃいませやろが余計な事言わんでええんや!」なんて言えやしない 男の子として格好悪すぎる
怒りたいけど怒れない 言いたいけれど言えない モヤモヤした気持ち 僕 凄く嫌いなんだよね
カウンター席に座るやいなや
「ヴィアン君のおかげて楽しめました ありがとうございます」
僕に感謝の言葉をのべた 僕は何故お礼を言われるかわからなかった
「僕 ヤスイになんかしたっけ?お礼言われるような事」僕は思い当たる事がなかった
「いやぁ 先日 沖縄へ旅行行ったんですよ その時 風俗に行きまして風俗店の呼び込みの男がヴィアン君によく似てて 沢山呼び込みの男がいたんですけどヴィアン君を信じてヴィアン君に似ている男の店に決めたんですよ その店すごい当たりでめちゃめちゃ可愛くて良い娘やって 遅漏の俺もすぐにイケました ヴィアン君のおかげです ありがとうございました」ヤスイは笑顔で言って珈琲に口をつけた
なんて言えばいいかわからない 馬鹿にしてるのかと怒れば良いのか なんて言えばいいかわからない モヤモヤした気持ち
煽りともとれる感謝の言葉を言いに来た
「そうか 良かったな」
僕はそう答えた
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