2016年4月20日水曜日

デリカシーの壁


僕は社会から言えば低所得労働者に位置していると思う 男の子として恥ずかしい 底辺やーん

でもお金は無くとも人には恵まれていると自負している

親友ヤマちゃんや友人オシゲちゃん 文学青年のキザワく君やちょいゲスオヤジのヒデト君やキレる若者の走りのアルマーニ君 他人から見ればダメ人間の集まりかも知れないけれど 僕はその友人関係に助けられたと言っても過言ではない 大袈裟だと言われても僕が生きているのは友人達のおかげだからだ

その友人達の一人 中学生から35才になった今でも仲の良い友人ターチ
彼 ターチは中学生の時から身長が180センチ有り 中学生ながらに顔は金城武にそっくり スポーツ万能で頭も賢かった
ターチは学生時代 ヒーローに成り得る存在だった しかし彼には欠けているモノがあった それはデリカシー
心ない一言で人の心をえぐる ブスにはブスと臭い物には臭いとストレートに心を切り裂くいてゆ
オブラートで言葉を包む事を知らず 言葉のナイフで人の心を一閃し蹂躙する

僕達が性に興味を持ち始める中学時代 オノウエさんという女の娘がいた オノウエさんは少し貧しく 小汚い家に住んでいた
子供ながらの好奇心からか「オノウエの家ちょっと見に行こうぜ」ターチは笑顔で言った 連れション行こうぜ のような軽い感じで
放課後 悪ガキグループでオノウエさんの家を見学に行った
オノウエさんの家はトタンの壁で少し老朽化していた
「おい!この家なんや!小屋やんけ!オノウエの家 小屋やん!」心ない発言と笑い声が聞こえた そう声の主はやはりターチだ
オノウエさんは肥満体型であったが為にその日からオノウエさんの家は「豚小屋」と呼ばれるようになった

僕は知っていた オノウエさんが小学生の時に住んでいた家はもっとボロボロな家に住んでいた事を
その家は近所の小学生から「妖怪ハウス」「農機具庫」酷い呼ばれ方をしていた その時その事を黙っていたのは僕の優しさ
「農機具庫」から「豚小屋」にグレードアップさせた男ターチ

ターチは中学生ながらに金城武マスク 女子達に人気があった人の心の切り裂き魔だとしても男前フェイスはモテる
バレンタインデー ターチにチョコレートを渡しに来た女の娘がいた 彼女の名はフクモリさん
僕達の中学校でブスランキングの3本の指に入るくらいフクモリさんは不美人な娘だった
ブスが勇気を出して手渡すバレンタインチョコ ターチはフクモリさんからチョコを受け取った
そして次の瞬間 ターチは教室のゴミ箱にバレンタインチョコを投げ捨てた 大きな笑い声と共に

無茶苦茶だ 確実にトラウマ決定だ 大好きな異性へのチョコレートのアプローチ 好意のチョコは3秒後ゴミ箱へダイブ そして響き渡る笑い声
僕はフクモリさんの顔を見れなかった ブスだからじゃないよ
徹底的に不美人に容赦ない男ターチ

中学生 思春期はデリケートだ でもしかし繊細だからといって優しくしてくれるとは限らない
不美人に容赦なく臭い者には臭いとATフィールドを貫く男がこの学校にいてるのだから
同級生のツジモト君は酷い腋臭症だった 彼のワキガは夏季 クラスメート達に地獄の季節を味合わせていた 体臭は仕方ない クラスメート達は皆 優しく「君臭いね どうにかならんかね」などと言う人はいてなかった
そう彼を除いて ターチはツジモト君の事を「アウシュビッツ」や「臭人」「テロリスト」と呼んでいた

ツジモト君はターチ同じバスケットボール部に所属していた ツジモト君は意外にバスケットがうまく ターチから男子バスケのリーサル・ウェポン「毒ガス兵器」の称号を与えられていた

そして女子バスケットボール部にもリーサル・ウェポンがいた それは毒ガス兵器イカワさん
思春期の女子は特にデリケートだ 皆は優しくイカワさんがワキガであることを気づかないフリをしていた やはりただ一人を除いて

ターチはツジモト君にイカワさんとの男女の交際を勧めていた 腋臭症同士のカップルが成立する事を望んでいる ターチは恐ろしい好奇心からどんな子供が産まれるか楽しみにしていると言っていた
イカワさんにも言葉のナイフが振り下ろされる キレのあるドリブルから放たれる綺麗なレイアップシュートと臭いからかターチから「毒ガス女王」「スメルクイーン」の称号を与えられた

イカワさんは泣いた 号泣した けして「毒ガス女王」の称号が気に入ったからではない
バスケットの練習中 荷物も学校に置き去りに泣きながら 走り去った
泣きながら校庭を走り抜けるイカワさんの姿を僕は今でも覚えてい
人の心の切り裂き魔 無差別な通り魔スタイル トラウマメーカー
なターチは心の屍を量産していた

先日 ターチと飲みに行った 居酒屋で隣に座った小太りの女性に「君はアバズレやんなぁ」と言葉のナイフを炸裂させた
小太りの女性は激怒した そりゃそうだ 初対面の男性に30分もたたない内に誰とでもファックする女と決め打たれたら 怒るに決まってる 
怒る小太り女性を見てターチは大笑いしていた

老いた今でも彼の言葉のナイフは研ぎ澄まされていた
他人のデリカシーの壁を乗り越えたり ましてやえぐる事も出来ない僕は
「せめてバターナイフだったならと」そう思うことしか出来ない

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