2016年4月10日日曜日

マルコメX



「昨日 ラーメンのスープを飲んでを舌を火傷したので休ませてもらいます」

僕が生きてきた中で驚いた言い訳の一つだ
 高校 大学と僕は体育会系で武道系の部活に所属していた ガチガチの縦社会 スポーツの世界では才能のない人間が一番辛い
「ラーメンのスープで火傷をした」とトチ狂った嘘を吐いたフジイ君も武道の才能のない一人だった 部活の練習自体が殴り合い 殴られ疲れ立ち上がれない部員は立ち上がるまで顔を踏み付けられる 嫌でも立たなければいけない 厳しい体育会系なら日常茶飯事 立ち上がらない方が悪い それが普通 根性論が全てだ
部活の練習は暴力に直結する 下手な人ほど打撃が当たる フジイ君はサンドバッグ状態 可哀想と思う事なかれ それを理解して部員になったんだから
部員の誰でも一度は辞めたいと思った事は有るはず でも乗り越えてきた 僕は乗り越える事をあきらめ幽霊部員になった 逃げ出したーい

ある日突然フジイ君は部活に来なくなった こんな場合すぐに主将からの呼び出しがかかる 「フジイ 何で練習来ないんや!体調悪そうにも見えへんぞ!」熱血醜男主将の怒号が飛ぶ
フジイ君は怯えていた 筋肉馬鹿には会話が通じない事も理解していた そしてあのセリフが飛び出す
「昨日 ラーメンのスープを飲んで舌を火傷したので休ませてもらいます!」
フジイ君は叫んだ そして練習場から全速で逃げ出した
追い詰められたフジイ君の理由にならない言い訳は熱血体育会系野郎達に火に油を注いだ 脳みそ筋肉には通用しない
フジイ君は駐車場で元DQNコーチに捕まり 熱血指導という鉄拳制裁をありがたく頂戴し 数日後 部活から姿を消した

男の子なら言い訳はしてはいけない 僕は苦い部活の経験から教えこまれている

僕が二十歳を迎えた頃 あるパプニングが起こった 朝起きると少し股間が痒かった 赤いギンガムチェックのパジャマの上から股間をポリポリ掻いた その日は少し痒いかな くらいで済んだのだが 2日が過ぎ3日が過ぎ 一週間も経ったあたりには股間の痒みは地獄になっていた 陰毛が痒い 死ぬほど痒い
燃えるような痒みの中 僕は理解した この痒みは居酒屋で知り合い桃色の夜を過ごした女子大生からのプレゼント 毛ジラミのギフトを僕の股間はしっかりと受け取った 思いがけないサプライズ まったく嬉しくない むしろ怒りさえ覚える
あんな真面目そうな女子大生が毛ジラミを飼っていたなんて 僕は泣いた痒みの中 現代の性の乱れを股間で痛感しながら

僕はドラッグストアで薬を買いたかったがスミスリンをレジに持っていく勇気がなかった 毛ジラミとバレるのが恥ずかしかった シャイと小さなプライドが邪魔をしてスミスリンに手を伸ばせない
そうなればやる事は一つ 剃毛だ 僕は剃刀を手にすぐさま行動に移す
毛むくじゃらで股間がツルツルの僕が出来上がり こんなの辱め罰ゲームじゃないか モジャモジャボディにパイパン仕様の姿を鏡で見て僕はまた泣いた

若い頃ダーティな恋愛しかしてこなかった僕の悲しい痒みの想い出

先日 親友のヤマちゃんから電話で御報告を受けた それはヤマちゃんも悲しみのギフトを受け取ったそうな そう毛ジラミ 地獄の痒み

股間をボリボリ掻きむしる中年男性 終わってる ヤマちゃんには股間の痒みと別にもう一つ問題があった ヤマちゃんには彼女がいる 毛ジラミを飼っている事がバレたら浮気したのがバレ カップル解消にまで発展するかも知れない
股間の痒みに耐えれないヤマちゃんは彼女に白状した しかし毛ジラミを飼っているとは言わず
「なんか最近 股間が痒いわ 多分 墓地の横で立ち小便したから罰があたったやとんおもう」

僕は思った その言い訳無理があるぞと 股間を掻きむしる中年男性でさえダメなのに墓地の横で放尿する中年男性もダメだ
股間が痒いのを幽霊のせいにする それこそ罰があたるし 本当の罰はこれからさ

男の子なら言い訳してはならない そうさ潔く剃りなさい そして罰を受けなさい
陰毛の虫よりも怖い彼女の怒りを受けなさい

股間だけ出家してももう遅い

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