2015年8月10日月曜日

いつかキラキラする日


蝉時雨 ギラギラした日差し 照り返すアスファルトの熱 僕は夏が来る度 たまに思い出す 近所の夏祭りの日に死んだ 飼い犬の事を。
その犬は 左目に毛が入り込み ペットショップで売り物にならなく 処分されそうになっている所を母親と妹が買ってきた
 その日からシーズー犬は家族になった

その日の夜 子犬の名前を決める家族会議が始まった 僕は「雲丹はどうだろうか?」と提案した 先日 食べた行きつけの割烹の雲丹のお造りが美味しかったからだ
「いや この犬の名前は鮪 マグロにしよう」父親が口を挟む 僕は思った 何故 海鮮系で対抗してきてたのだろうと 付けたい名前を言えばいい 好きな寿司ネタで張り合わなくていい。

多数決の結果 子犬の名前は「ウニ」となった
新しい家族「ウニ」茶色斑のシーズーはケーヒニスクーネのエクレアみたいで可愛いかった 犬好きな父親の寵愛を受けスクスクと育っていった 長い年月を家族として過ごし そして四年前に「ウニ」は死んだ 老衰だった。
母親と妹は号泣し愛犬の死を悲しんだ そして「ウニ」はペット墓地に埋葬され 小さな墓石が建てられた
 そこに書かれた文字は「ウニ・ヴィアン」

僕は猛省した 安直な理由で愛犬に魚介類の名前を付けてしまったことを 「ウニ」は牝だった 「もっと可愛い名前付けたら良かった」悲しい気分 ボソリと呟いた。
「ほんまによ!」間髪入れずに父親の叱咤が僕にとんだ
ちょっと待て 親父もマグロという名を付けたがってたじゃないか どちらに転んでも 可愛さの欠片もない海産物の域は出てないじゃないか 反論しようとしたが止めておいた 絶対に喧嘩になる  喪に服したい。

名前は良い名前を付けた方が良い  ペットの名前であろうが。
変わった名前だと はたまた父親と口論になりかれないし 命日が来る度に猛省しなければならないかもしれない 猛暑の夏 僕 猛省する夏。

僕の勤務先のカフェは女性のお客さんが大半を占める その中でも主婦の方が多い 子供連れのお客さんの為にベビーチェアーが五脚ある
それでも足りないくらい 子連れの主婦が来店する
僕はたまに驚く事がある 子連れのお客さんが子供を呼ぶとき その子供の名前が変わった名前だった時だ
「新発売のシャンプー」「ポケモンの新種」「高級苺の品名」の何かのような名前 僕は違和感を覚える。
日本人の一般的な名前では駄目なの?そう 問い掛けたい しかし お客さんと店員では立場が違う 聞き流すだけである。

一年前 知り合いに子供が産まれた その赤子の名前はアメリカ人のミドルネームだった 両親は日本人だ 欧米の要素は何処にもない そして名前は当て字で無茶苦茶だ
名前は欧米 顔面はアジアン・・・
僕のようなアラブ人のような顔面で名前がムハンマドなら笑いになるかも知れないが そんな笑いは要らない 産まれて初めて貰うプレゼントそれは名前 それが驚きや冷笑の対象になるのは厳しすぎる

そしてまた別の知り合いの子供の名前は古風だ しかし古風過ぎ 捻りをいれるから違和感を感じる
僕は初めてその名前を聞いた時 セレモニーホールの名前かと思った 葬儀会館でも通用する名前 生後間もないのに「天国でゆっくりしいや」を連想させた。

外人のような名前を付けた所で外人にはなれないし 荘厳な名前を付けた所で傑物になるとは限らない 世間を驚かすような名前を付けても時代の麒麟児になるとは限らない そう成れるならみんな変わった名前を付けている 大人になっても恥ずかしくない愛情ある名前で良いんではないでしょうか。

世間ではキラキラネームというらしいですが 僕から見ると一切キラキラしてないですね 凄く可愛らしい名前の不細工 猛々しい名前の泣き顔キッズ 30歳を越えてそんな名前で呼ばれたら羞恥プレイみたいなもんだ

先日 ホールのスタッフを面接した 履歴書を見たら名前が読めない ルビを振ってくれてようやく読める
サンリオのキャラクターに著作権侵害で訴えられそうな名前だった
「この店とはちょっと勤務時間が合わないね また 昼間仕事が出来るようになったら また 面接に来て下さい」僕は丁寧にお断りしたが 本当の理由は変な名前の娘は雇いたくないのである
「君は良いスタッフかも知れないが 君の両親が悪いのだよ 名付けの不幸を呪うがいい」僕は赤い彗星気分で落とす 木星帰りの僕はカトンボよりイージーに。

犬の名前でも僕は後悔している 自分の子供の名前そんなんでいいの?
しかし かくいう私もタケシヴィアンを名乗っている ネーメングセンスにとやかく言う資格はなかった 申し訳ない。

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