2015年12月5日土曜日

ニセ永田裕志VSメスヒョードル


僕が小学校の頃 学年が2つ上に松岡君という男の子がいた 松岡君は秀才でアタマの賢い生徒で 通っていた小学校では有名人だった オール100点を連続でとる度に職員室を騒がせていた そして松岡君は有名私立中学校に進学した
知性と対極にいる僕には松岡君のその後は知るよしもなかった

しかし最近 ジーニアス松岡君が近くの駅を騒がせているらしい
松岡君が故郷に錦を飾り 立派な偉人になり帰郷 人生の勝者の駅前凱旋で野次馬でも出来たのかな と思っていたがそうではなかった
松岡君は有名企業に就職したが仕事のストレスで心を病み 仕事を辞め 最近 都会から帰郷してきたそうだ
ボサボサ頭の松岡君は虚ろな目でよく駅前に出没し 自動販売機横のゴミ箱をあさり 空き缶を手に持ち 缶に残った汁を飲む 空き缶を口につけ顔を上げ 残り汁を吸う奇行を行う松岡君は不審者としてまた有名人になった
松岡君は近所の小学生からは「妖怪や!」「空き缶に小便入れてみよ」などと言われ 通行人からの善意の通報により度々パトカーで連行されるのを僕は目撃した

ジーニアス松岡から妖怪「空き缶吸い」に変貌した松岡君
人生は本当に何があるかわからない。

去年の十二月の雪の降る夜 僕がいた 木枯らし吹きすさぶ様な熱気の欠片もない 場末のスナックに。
田舎町のスナックは総重量約150キログラムの牝トロル2体をホステスで働かせても そう潰れることはない ママの顔が広ければ客が来る 田舎町ならではの人付き合いだ。

そしてこの場末のスナックにもクリーチャーが働いている
彼女の名はミズホちゃん ミシュランマンのようなボディをしたホステスだ 無駄に色白で何故かミニスカートを常時着用 太い足を見せつける バツイチ子持ちのクリーチャーミズホ。

僕はミズホちゃんが1度結婚している事に驚いたが 傲慢な接客態度にも驚いた 勘違いした不美人 自身を美しいと錯覚した立ち振舞いや仕草は僕をピンポイントで苛立たせる
ミズホちゃんの横で僕は水割りの氷をガリガリと噛み砕き イライラを募らせていた
しかし僕より苛立った男が目の前にいた それは一緒に来ていた知り合いのカンちゃんだった 風俗大好きプロレスマニアのカンちゃんは何故か荒ぶっていた
カンちゃんはミズホちゃんの事を「ヒョードル」と呼ぶ ヒョードルは人類最強の男 ロシアンエンペラーと称される総合格闘家だ ミズホちゃんは目と鼻がヒョードルにそっくりだからだ。

何故か荒ぶっているカンちゃんの苛立ちの原因が次の発言でわかっ
「ヒョードルよぉ お前見てたら この前 風俗であたったブス思い出してムカついてきた!」カンちゃんは怒鳴った
理不尽な怒りである やはりプライドの高い勘違いブスも黙ってはいない
「はぁ?私ブス違うし!」吼えるメスヒョードル 残念だが君はブスだ
「お前はブスでデブや!調子に乗んな!」カンちゃんは叫び席から立ち上がり ヒョードルを椅子から引きずりおろした
僕は目を背けた 暴力的な行為に恐怖したからではなく 倒れたミニスカヒョードルのパンツを見たくなかったからだ
カンちゃんはヒョードルの足を絡め取り 敬礼のポーズをし店内を見回し倒れこんだ
「ギャアアァァア!」叫ぶヒョードル そうカンちゃんはナガタロックをかけた プロレスラー永田裕志選手のフィニッシュホールドだ カンちゃんはプロレスマニアなだけあって白目パフォーマンスまで完璧にこなす
白目を剥いてプロレス技をかけるカンちゃん 泣き叫ぶメスヒョードル このバトル止めなくていいの?とスナックのママの方を見たところママはカウンターで他の客と接客をし見て見ぬふり ママも何か思うことも有るのだろう
僕は水割りを飲み煙草に火をつけた こんなもめ事 関わらない方が吉だ

カンちゃんは今年からこの田舎町の市会議院になった
趣味は風俗 女性にも平気でプロレス技をかけれる男が今「先生」と呼ばれている
ニセ永田裕志から市会議院に変貌したカンちゃん

人生は本当に何があるかわからない。
 

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